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舞台『THE BEE』出演 小古呂の妻役

舞台『THE BEE』出演 小古呂の妻役

沼田花香です。

私が過去に出演した舞台作品「THE BEE」について振り返ります。

2018年出演 野田秀樹作「THE BEE」について

THE BEE
脚本:野田秀樹/コリンティーバン(原作・筒井孝弘)
演出:小佐部明広
企画:髙岡諒一(劇団不退転)
場所:レッドベリースタジオ
公演日:2018年6月29日-7月3日(全7ステージ)

この作品は、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件に触発された野田秀樹が、筒井康隆の短編小説「メタモルフォセス群島」(新潮社)に収録された「毟りあい」を原作として描いたものです。

札幌の琴似にある「レッドベリースタジオ」という小さな戸建ての劇場で、お客様の眼前に狂気をぶちまけるという刺激的な演劇体験でした。
実はこの作品ではフライヤーとチケットのデザインにも初挑戦していました。
またいつか絵やデザインもやりたいなあ。昔から挑戦したいことが多すぎて、この身体ひとつでは足りなくなってきています。

「THE BEE」という作品

ある日 平凡なサラリーマンである井戸が家路につくと、自宅前で警察・マスコミの喧騒に圧倒される。脱獄囚の小古呂という男が、井戸の妻子を人質に取り、家の中で立て籠っていた。
どこか頼りない警察官とともに妻子の救出に向け動き出すが、井戸の心は恐怖に支配されていく。
井戸が恐怖を征服するたびに狂気の様相は深まり、事態は思わぬ方向へ。
報復の連鎖と人間の業がありありと表現される。

作品自体も当然恐ろしいのですが、稽古から小屋入り期間まで看護学校の実習だ演習だ試験だなんだと続き、ついには劇場にまでノートPCを持ち込んでレポートを書いたりしていたことを思い出して、学生時代の体力にも恐れおののいています。

当時使っていたスケジュールアプリはカラフルに埋め尽くされており、大変充実していたんだなと感心するばかりです。こういうのって、学生の演劇人あるあるなのかもしれません。

独特のテンポと求められる演技の難しさ

この作品は四人芝居であり、私で言えば「警察官」「リポーター」「人質にとられる脱獄犯の妻」といった複数の役柄をスピーディーに切り替え演じる構成となっていました。
複数役を演じるのは初めての経験。

約70分間の芝居で、テンポはかなり速い印象です。野田秀樹さん曰く、「10秒に一度、何かが起こる。それがこの作品の持つ業である。」
「人間が何かの弾みで、ひとたび堕ち始めると、あっという間に堕ちていく。それが、10秒に一度、堕ちていく姿だ。」とのこと。

どろりとしているのに疾走感のある物語でした。よくぞ全7ステージを、あの真夏の小劇場で演じ切ったなあと思ってしまいます。

私が演じた役の中でメインとなる「小古呂の妻」という人物は、夜のお仕事をしている女性です。

その雰囲気と生々しさを表現する、ストリッパーのように踊る、彼女の逞しさ・か弱さを出す、恐怖に怯える、子を庇う、しかし狂う、狂った日々に慣れていく、自分を脅かす人間との性行為と壊れた日常生活を繰り返し過ごす、という演技が必要でした。

この役を演じることの難しさたるや。あまりにも当時の素の自分とはかけ離れた世界と人物だったため、これまでで最も難しい役だったかもしれません。

傲慢と善良

「―それで彼は、悪い策略を用いて、悪い連中を悪さでしのぐために完璧に悪になりきる決心をしました。

「―彼が悪くなればなるほど、それは善いことなのです。

最近、辻村深月さんの「傲慢と善良」という恋愛小説を読みました。「THE BEE」では井戸が、自らを「善良だった」と述べています。

ジャンルもストーリーも全く異なる作品ですが、「善良って一体なんだろう」と考えさせられるという一点では通ずるところがある気がしました。
一人の人間の中にも、善良さと傲慢さは共存するのでしょうね。

この物語において、井戸は小古呂に「仕返し」をします。
「普通とはかくあるべしと思われるとおりの人生を生きてきた」という自分を捨てて、徐々にタガが外れて残忍になっていき、小古呂の妻子を痛めつけるようになります。

人があまりにすんなりと堕ちていく姿の生々しさ、どぎついストーリー。
振り返ったとき、当時の私がこの作品を本当に理解して演じ切れていたのかは怪しいところです。

しかしこちらも名作脚本パワーをおおいに借りつつ、終演後アンケートで好評をいただいていたことを記憶しています。お客様の中には、面白い、体当たりで熱い芝居だった、物理的にも暑かったというポストを呟かれている人もいらっしゃいました。

総じてこの難度の芝居を経験したこと、さらに言えば友人を含む沢山のお客様に向け、「性行為」などの日常では暴かれない人間の営みを見せつけたことで、役者として一皮剥けたのではないかと思います。

最後に

あの頃、18歳なりにこの名作に挑戦できたことはとても力になったと思います。おかげさまで楽しく駆け抜けた夏でした。

しかし今ですら、今でこそ、この作品とこの役は難しいと思います。

当時共に作品を作ってくださった皆様、見届けてくださったお客様へ、改めて感謝を申し上げます。「THE BEE」は純粋に見応えがあり面白い、またどこかで出会いたい作品です。

次にどこかで上演されたら、ぜひお客さん側でも楽しんでみたいなあと思っています。

小古呂の妻役-沼田花香

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