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舞台『トランス』出演 紅谷礼子役

舞台『トランス』出演 紅谷礼子役

沼田花香です。
私が初出演を果たした舞台「トランス」について振り返ります。

2018年 初舞台「トランス」について

「トランス」

脚本:鴻上尚史
演出:こさべ あきひろ
企画:髙岡諒一(劇団不退転)
場所:サンピアザ劇場
公演日:2018年3月25日(全2ステージ)

本作は「第三舞台」で上演された作品で、初演では小須田康人、長野里美、松重豊(敬称略)が出演した三人芝居です。独白シーンも多く、台詞量が膨大で濃密な作品です。

舞台装置は本家の初演に倣い、白い箱が3つとベッドのみのシンプルなセット。あとはマイムで演じる、非常に楽しい舞台でした。

オーディションへの挑戦

当時、私は看護専門学校への入学を控え、比較的時間に余裕がありました。もともと演技に興味があり、突然思い立ったようにオーディション情報を探しはじめました。

しかし北海道ではオーディション自体が少なく、ようやくTwitter(現X)で見つけた出演女優募集の投稿に、迷わず応募しました。

オーディション当日、私は当然ながら舞台未経験での応募でしたが、他の応募者は全員が舞台経験者でした。そのためかなり緊張したことを覚えています。さらに言うと、演出家のこさべさんが金髪ですんとした表情だったことでより一層緊張しました。

合格の連絡を受けたときは飛び上がって喜び、それからは第三舞台の舞台映像を何度も何度も毎日繰り返し見続け、台本をしわしわになるまで読み込みました。

稽古と初舞台の苦悩

今思えば、初舞台にしてはハードな作品でした。役柄と向き合い、コンテクストする(役を自分になじませる)ことの難しさを痛感しながら、初めての経験に挑む日々が始まりました。当時、札幌からは少々離れた岩見沢市に住んでいましたが、札幌の稽古場まで片道一時間以上かけて電車で通い詰め、演劇に没頭しました。

それでもキャパシティ255席の劇場に響かせる声量、長台詞を聴かせるための滑舌、演技以前に何もかもが足りていなかったと思います。

実のところ1ステージ目の途中で一度、台詞が頭から飛んでしまい、数秒間の空白を生み出しました。人生初舞台の1ステージ目にして最大の失敗です。
ただ、愚かな私の名誉のために補足すると、その後は立て直して演じ切ることができました。それ以来、現在に至るまで台詞が飛ぶというミスは重ねていません(笑)。

舞台の魅力と札幌演劇界の温かさ

しかし演劇というのは面白いものです。
私の技術や経験が不足していても、ミスをしても、出演者やテクニカル、舞台装置、その場の空気の全てが私を支えてくれました。
そして粗削りながら私たちの熱量や最大限の表現を評価してくださるお客様に恵まれたことで、公演はよいものとして昇華されたように思います。

終演後のアンケートには当然手厳しい感想もありながら、「彼女が主演の作品を上演してほしい」というコメントをいただき、それは今日まで私の支えとなっています。

札幌演劇の温かな土壌のおかげで、私は今も演劇を続けています。

「私の愛する人は精神を病んでいます。ですが、私は、とても幸福です。」

物語の登場人物は、高校時代の同級生だった3人です。

  • フリーライターの立原雅人
  • 精神科医の紅谷礼子
  • ゲイバーに勤める後藤参三

私が演じたのは紅谷です。

物語は、大人になった紅谷の勤める精神病院に立原が患者として訪れ、再会するシーンから始まります。そして台本にはこんなト書きが登場するのです。

かすかに、医者と患者の立場が逆転する匂いがする

本当に精神を病んでいたのは誰なのか。トランス状態だったのは誰なのか。
3人の歪みが混ざり合いながら、物語はラストへと向かいます。そして、「ですが、私は、とても幸福です」と締めくくられるこの脚本には、強く心を揺さぶる力がありました。

舞台を終えて

見届けてくださった皆さまからは好評をいただいたように思います。

個人的には、中村雷太さん(クラアク芸術堂)が演じたオカマの後藤参三があまりにもハマり役で、劇中で彼(彼女)と会話するシーンが女子会のようで楽しかったことが記憶に残っています。

この座組で初めて出会ったはずの2人が、本当にかつての旧友のような気持ちにすらなる。この舞台をきっかけに自然と演劇の魅力に引き込まれていきました。

その後、打ち上げの席でそのまま次回公演が決定し、私の人生2度目の舞台出演はこの上なくスピーディーに決まったのでした。

最後に

舞台の上で自分の人生とは異なる人生を生きる時間は、私にとって大変楽しく、貴重で、有意義なものです。
大人になった今、紅谷という役をまたいつか演じてみたいと思っています。

当時関わってくださった皆さまへ、感謝を込めて。

紅谷礼子役-沼田花香

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